慢性痛の予防

首・肩こりを予防する体の力の抜き方

体に力が入り続けていませんか?

首こりや肩こりが慢性化している人の多くは体の力を抜くのが苦手です。

私は鍼の治療の前に必ず患者さまの全身をほぐし、ストレッチしながらその日の体の状態を診るのですが、体に力が入りすぎて筋肉や関節の状態がとらえにくい方が結構いらっしゃいます。これから鍼の治療を受けるという緊張感もあるのかも知れませんが、こういう方は普段から無意識に体に力が入っているのだと思います。実際、ある患者様は「いつも無意識のうちに体に力が入っている気がします」と仰っていました。

体に力が入りやすい理由としては、以下のようなものが考えられます。

  • 緊張しやすい性格
  • 人とのコミュニケーションが苦手
  • 歯をくいしばる癖
  • 呼吸が浅い
  • 関節が硬い

無意識の内に体に力が入っている人は常に交感神経が優位になっているので、血管と筋肉が収縮し「コリ」が出来やすい状態を作ってしまいます。“特に何もしていないのに疲れる”という方は、普段から体の力を抜くことが苦手なのでしょう。

体の力を抜くコツ

仕事でもスポーツでも、「ここぞ!」という時に体に力が入ってしまってはこれまでの苦労が台無しになってしまいます。意識的にリラックスした状態を作れて、体の力を抜くことが出来れば、パフォーマンスを最大限に発揮できミスも少なくなるはず。そこで、ちょっとした事で体の力を抜くコツをお教えします。

  1. 奥歯を噛みしめないようにする。
  2. 足を動かす(意識をそらす)。
  3. 呼吸を味方にする。
  4. 自律神経の性質を利用する。

次からはそれぞれのコツについて説明します。

1.奥歯を噛みしめないようにする。

奥歯を噛みしめると自然と全身に力が入ります。逆に言うと、力を発揮したい時は奥歯をグッとかみしめて筋肉に力を集めるのです。重い荷物を持ち上げる時には、奥歯をかみしめて踏ん張りますよね?でも力が必要ない時にまで嚙みしめていると、筋肉が疲労を起こすばかりでなく、奥歯が欠けたり顎関節症を発症することもあるので噛みしめ癖は早めに治した方が良いです。

意識的に奥歯を噛みしめないようにするには

  • ガムを噛む(スポーツ選手がよくやっていますね)
  • 舌を出す(ベーっではなく、ペロっと出すくらいで)
  • 前歯と下の歯の真ん中で何かを噛む(飴やグミ、つまようじでもOK)

※本来なら、口を閉じた状態では、舌が上あごを押して奥歯が合わさらないようになっているはずです。舌の位置は食いしばりに深く関係しています。これについてはいずれ詳しく書きます。

2.足を動かす。

緊張して体に力が入るのはほぼ上半身です。

緊張しすぎて足が出なかったり、手と足が同時に出たりもしますが(笑)、ほとんどの場合は、後ろからワッ!と脅かされた時のように肩が上がり、首をすくめて体が固まっています。なので、上半身から意識をそらす目的で、足を動かすと徐々に緊張がほぐれてきます。また、足を動かすとふくらはぎの筋肉が動いて全身の血行を促進する効果があるので筋肉がほぐれやすくなるのです。「貧乏ゆすり」は見た目は悪いですが、無意識に緊張を解こうとする体の反応でもあります。

効果の高い足の動かし方は以下の通りです。

  • その場で足ふみ
  • その場で軽くジャンプ
  • かかとの上げ下げ(座っていても、立っていてもOK)
  • 足首を回す

緊張している状態から意識をそらす目的であれば、手をさする、首を回すなど、なんでも良いのですが、足を動かすと全身の血行が良くなるのでおススメです。

3.呼吸を味方にする。

緊張状態の時に働く交感神経=自律神経は、不随意神経(意思とは無関係に働く神経)なので、自分でコントロールすることは出来ません。しかし、ただ一つ交感神経と副交感神経のスイッチを切り替えられるものがあります。それは「呼吸」です。

胸でする浅い呼吸(=胸式呼吸)は、交感神経を優位にします。お腹も使う深い呼吸(=腹式呼吸)は、副交感神経を優位にします。なので、”体が固まっているな”と感じたら、意識してゆっくりとした深い呼吸を続けてみて下さい。呼吸に意識が集中できるようになったら体がほぐれているはずです。これは、眠れない時にも有効ですよ。

なかなか深くゆったりした呼吸は難しい、という方は以下のことを試してみてください。

リズムをつけて吐く:「はっ(短く)、はっ(短く)、はーっつ(長く)」や「ふっ(短く)、ふっ(短く)、ふーっつ(長く)」など。声を出してもOK。この時、肩の動きをつけるとさらにリラックスできます。「はっ(肩を上げて下げて)、はっ(肩を上げて下げて)、はーっつ(肩を上げてストンと落とす)。

鼻で吸って、口をすぼめて長く吐く:鼻から自然に息を吸って、ストローで飲み物を飲むときのように口をすぼめた状態で長く吐きます。長く吐けないという人は、お腹をへこませて体の中の空気を口へしぼりだすようにすると良いかと思います。

不思議なもので、普段何気なくしている呼吸なのに意識するとなかなか上手にできないものです。上述したものも難しいときは、どんなやり方でもいいので吐くことだけに意識を集中すればリラックス効果があります。

4.自律神経の性質を利用する。

自律神経は車のアクセルとブレーキのように相補的に働いています。双方が助け合って働くことにより、体の機能がベストな状態で活動できるようにしているのです。この働きは前述したように、不随意神経なので意志の力ではコントロールできません。前項で呼吸は意識的に自律神経のスイッチを切り替えられるものだ、とご説明しましたがもう一つ、自律神経の性質を利用して逆の働きを誘発することが出来るのです。

それはいったん、交感神経を活性化し反動として副交感神経の発動を促すことです。

かつて、高見盛が取組前に行っていたロボコップのような動作や、柔道やレスリングの選手が試合前に顔や体を叩いたり叫んだりして気合を入れる行為は、一見戦いモードに入る助走のように見えますが、あれは変な「力み」を取る効果があると言われます。

スポーツ選手が競技の後、疲労を早く解消するために水風呂に入るのも、いったん交感神経を極度に優位にして、副交感神経のはたらきを高めるための方法です。この性質をビジネスマンが利用するなら、プレゼンや商談に向かう前にこぶしをグッと握りしめ、息を止めて、全身に力をギューッと込めた後、一気に息を吐けば体の力がフッと抜けているはずです。私はこの方法で鍼灸学校の学生時代にあった臨床実習(実際の患者さんを治療する授業)を乗り切りました。皆様もぜひ一度お試しください。

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