痛みを知る

慢性的な筋肉痛『筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)』とは

みなさんは筋・筋膜性疼痛症候群という病気をご存知でしょうか?

おそらくほとんどの人が初めて耳にする病名だと思います。では、肩こり、腰痛、膝痛はどうですか?こちらは現代人にとってとても身近なものですよね。実は筋・筋膜性疼痛症候群とは、肩こり、腰痛、膝痛を始め、首痛、股関節痛、背中の痛み、頭痛にいたるまで「筋肉のコリ」が原因で時に激しい痛みを生じる病気の総称なのです。

“肩こりならコリが痛みの原因というのはわかるけど、腰痛や膝痛はヘルニアや骨の変形が原因なんじゃないの?”と思われたそこのあなた!その考えこそが2000万人を超える慢性痛患者がいっこうに減少しない理由の一つなのです。

世界中で一般的な病気でありながら、日本では医師、患者の双方で認知度が低い「筋・筋膜性疼痛症候群」とはどのような病気なのかをご紹介します。

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)は、筋肉疲労の長期化、慢性化によっておこる

筋肉が硬くなっている状態を表す言葉は色々です。筋肉がこっている、張っている、こわばっている、緊張している、収縮している、硬直しているetc。筋・筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:MPS)とは、こういった硬くなった筋肉が原因で、痛みやしびれ、運動制限、筋力低下、自律神経機能障害を併発する症候群の総称です。

筋肉に痛みを感じる症状で一般的なのは、激しい運動や登山などをした後に経験する「急性の筋肉痛」がありますが、この筋肉痛と筋・筋膜性疼痛症候群とは全くの別物です。

通常私たちが経験する「筋肉痛」は、スポーツや登山、筋トレ、重い荷物の持ち運びといった筋肉を過度に使用した時に一時的に感じるものです。慣れない運動を行ったときや普段使わない筋肉を使いすぎた時に特に強い痛みを感じます。これは筋肉を酷使したことで筋肉を構成する筋線維や周りの結合組織が損傷し、炎症がおきたことによる痛みです。この痛みは炎症によって生成された発痛物質が末梢神経を刺激することでおこる科学的な刺激なので数日安静にしていれば炎症も治まり自然に消失します。

一方の筋・筋膜性疼痛症候群は慢性的な痛みです。

筋・筋膜性疼痛症候群になる原因は様々ですが、多くは筋肉痛を起こすような激しい運動や労働を日常的に行う、猫背に代表される悪い姿勢、流れ作業のような単調で正確さを求められる作業の繰り返し、長時間のパソコン操作といったことによる筋肉の疲労が長期化、慢性化した時に発症します。

上に挙げたような動きは、激しい運動をした後のように炎症をおこすほどではありませんが、それでも筋肉は微小に損傷しています。

疲労した筋肉は局所的に血流循環障害になっているので、運動、入浴、マッサージなどなんらかの手立てをして血流を回復しなくてはなりません。しかし、疲れているから、面倒くさいからと日々のケアをせず、傷が回復しないうちにまた筋肉を酷使すると、損傷した組織が癒着や硬化を始め、筋肉内に医学用語でいう「筋硬結」、一般的には「コリ」が生じるのです。

コリの中に潜むトリガーポイントが痛みの発信源

「コリ」は損傷の程度、損傷してからの期間によってその範囲や硬さは様々です。最初はコリコリとした程度だったのが、その内にゴリゴリになり、最後は骨と間違うほどのカチカチのしこりになっていきます。この「コリ」が機械的刺激(物理的な刺激)となって筋肉内にある末梢神経を刺激し、断続的あるいは継続的に痛みを生じさせるのです。

「コリ」の中には押すと痛い点=圧痛点が生じることがあります。これを『トリガーポイント』といいます。『トリガーポイント』は痛覚の受容器が過敏化している場所で、ここを押すと激しい痛みや押したところと違うところが痛む【関連痛/放散痛】を起こします。この『トリガーポイント』によって強い痛みが生じている状態が筋・筋膜性疼痛症候群です。

筋・筋膜性疼痛症候群の症状は「急性の筋肉痛」のように腕や脚に多く見られるのではなく、首、手首、頭、関節周辺などあらゆるところに現れます。またその症状は一般的な「筋肉痛」とは異なり、痛みやしびれの強さが相当激しいものになります。また、寒冷にさらされる、ストレスを受ける、睡眠不足になるといった要因が加わることで悪化する傾向にあります。

筋・筋膜性疼痛症候群を起こさない為には「今日の疲れは今日取る」を心掛け、悪い姿勢、同じ筋肉に負担をかける動きをしないことが大切です。

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