痛みを知る

慢性痛に湿布は効かない。急性痛と慢性痛の違い

『痛みには湿布』の誤解

肩こりや腰痛、膝痛などの治療で来院された方が、湿布を貼ったままいらっしゃることが結構あります。

聞くと、「数日前から痛みが増したのでとりあえず貼っておきました」とのこと。

『痛みには湿布』と考える人は多いです。ですが、通常湿布(冷湿布)が効果を発揮するのは、捻挫やぎっくり腰といった急性のケガで、炎症が起きている患部を冷やす目的の時です。何か月、何年も続いている慢性的な痛みがひどくなったからと言って、湿布で患部を冷やしてしまうのは、痛みが軽減するどころかむしろ血流を悪化させ、痛みを増幅させることが多いのです。

『痛みには湿布』に代表されるように、「急性痛」と「慢性痛」の区別がつかず、急性痛の時の治療を続けて、慢性痛を長引かせてしまっているケースがよく見られます。

はっきりとした原因があるのが「急性痛」

急性痛は、スポーツや転倒などによって、体を激しくぶつける、足をくじく、肉離れを起こすといったはっきりとした原因があって生じている痛みです。この場合は、病院で診察を受け、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査をすれば、痛みの原因となっている障害(骨折、打撲、捻挫、挫傷など)が必ずみつかります。

急性痛は基本的にケガを負った場所が局所的に痛くなり、そのケガが治ると痛みもなくなります。痛みの原因はケガによる組織の障害や炎症なので、非ステロイド系消炎鎮痛薬や湿布(冷湿布)が効果を発揮します。

▼急性痛を発する疾患

  • 打撲
  • 捻挫
  • 挫傷
  • 骨折
  • 脱臼
  • ぎっくり腰
  • 手術後の痛み

原因が分かりにくいのが「慢性痛」

国際疼痛学会では慢性痛を「急性疾患の通常の経過、あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて、長期(3か月または6か月)にわたって持続する痛み」としています。「3か月~6か月」と期間に幅があるのは、ケガや病気の程度、損傷したのがどの組織か、あるいは個々人の栄養状態などによって、治癒にかかる時間に差があるからです。
つまり慢性痛とは、「痛みの原因となるようなケガや病気はとっくに治っているのに、痛みだけが消えずに続いている」状態を指します。

現在日本で慢性痛を抱えている人は約2300万人(成人の4.4人に1人)。その中でも多いのが、腰痛(55.7%)、四十肩・五十肩・肩こり(27.9%)、頭痛・片頭痛(20.7%)となっています(※「痛み」に関する大規模調査 「Pain in Japan 2010」実施より)。つまり、慢性痛のほとんどは筋骨格系の痛みであることです。※頭痛の多くは緊張型頭痛で、これは首肩こりが原因で起こります。

慢性痛の原因がわかりにくいと言われる理由は、腰痛や肩こりいった筋肉のコリやハリが、ケガのような組織の損傷ではなく、筋肉の蓄積疲労や筋力低下による機能不全であるため、病院の血液検査や画像検査で原因を見つけることができないからです。

さらに筋肉の疲労や筋力低下を招く要因が、本人の年齢、生活習慣、栄養状態、経済状態、精神状態など複雑に絡み合っているため、これが痛みの原因だ!と単純に特定することが難しいのです。

▼急性痛と間違えられやすい慢性痛疾患

  • 緊張型頭痛
  • 椎間板ヘルニア
  • 頸椎ヘルニア
  • 頸部脊柱管狭窄症
  • 腰椎すべり症
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 坐骨神経痛
  • 梨状筋症候群
  • 手根管症候群
  • 頚椎症
  • 変形性ひざ関節症
  • 半月板損傷
  • 腱板断裂
  • テニスひじ
  • 腱鞘炎
  • 外反母趾

慢性痛の治し方

急性痛と慢性痛では、痛みの原因が異なるため治療法も異なります。

急性痛の場合、発症すぐ(24時間~48時間)は冷やして安静が基本です。その後は塗り薬や服薬でケガを治しながら、徐々に体を動かして組織が固まらないようにしていきます。

では、慢性痛を治すにはどうすれば良いのか?

それにはこの2つしかありません。

「筋肉の柔軟性を取り戻すこと」と「筋力をつけること」です。

コリやハリ、筋肉のこわばりと表現される。筋肉が硬くなってしまう原因は大きく分けて3つあります。

  1. ストレスや不安、心配事による精神的な緊張
  2. 同じ姿勢や運動不足などによる血流不全
  3. 2.の状態が長く続いたことや急性痛の原因をちゃんと治さなかったことによる筋膜のよじれや癒着

それぞれの原因ごとに私が最適だと思われる筋肉の柔軟性の取り戻し方を紹介します。

①の精神的な緊張が原因であれば、エステやオイルマッサージなどの気持ちの良い手技による施術が良いと思います。ご自身で行う、ヨガ、マインドフルネス(瞑想)、音楽療法などで効果を感じる人もいます。①に原因がある人は日々ストレスやプレッシャーがかかっている人だと思うので、それらから解放される時間を多く持つことで、精神の緊張と筋肉の緊張がほぐれていきます。

②の血流不全が原因の場合は、巷にあるマッサージ、カイロプラクティック、整体、鍼灸などなんでも良いと思います。施術者とその手技が自分に合っていれば効果が得られます。もし数回行って効果が感じられなければ、その施術はご自身のコリの度合いと合っていない可能性があるので、より筋肉をゆるめる効果の高い施術に変えるべきです。

また血流不全はウォーキングやジョギングといった軽い運動、入浴、ストレッチなどを継続することでコリの度合いが軽減していきます。

③の筋膜の異常が原因である場合は、その治療を専門とする治療院に行く必要があります。一般的に「トリガーポイント療法」を行っている治療院です。トリガーポイント注射、エコーガイド下Fasciaリリース、手技による筋膜リリース、筋膜をターゲットにしているはり治療などがこれにあたります。

ご自身のコリやハリが血流不全によるものなのか、筋膜の異常なのかを知るのには以下を参考にしてください。

  • 重だるい痛み→血流不全
  • 患部をグーっと押したり、バンバン叩きたくなる→血流不全
  • 夕方になると痛みが増す→血流不全
  • 体を動かした時にピキッとした痛みが走る→筋膜の異常
  • 痛い場所がつりそうな感覚になる時がある→筋膜の異常
  • 痛い場所を触れるとゴリゴリしている→筋膜の異常

※血流不全と筋膜の異常は併発していることが多くあります。

筋肉が柔らかくなってきたら、スクワット、腹筋、背筋、腕立て伏せといった筋トレを出来る範囲で継続して行っていくことをお勧めします。またどの原因でも有酸素運動は慢性痛の解消に有効です。

上述したように、慢性痛を生じている原因には、本人の生活習慣や栄養状態、経済状態、精神状態などが複雑に絡み合っています。なので、痛みがなかなか取れない時は、ご自身の生活を振り返り、体に負担のかかる姿勢や動きをしていないか、栄養や睡眠は足りているか、ストレスが過剰にかかっていないかを確認する作業も必要です。

多くの人が“慢性痛は治らない”と思っているようです。ですが、正しい慢性痛の治療とご自身での取り組みを継続すれば、慢性痛は必ず治ります。慢性痛は『体の生活習慣病』と言われています。今の痛みが長い年月をかけて体と脳に定着してしまったように、治していくのも一歩一歩です。

まずはご自身のコリやハリの原因が何なのかを知り、自分にあった治療院や解消法を探してみてください。

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