腰痛腰椎ヘルニア、腰椎脊柱管狭窄症

慢性腰痛とは深層筋の痛み

腰痛は人間が二足歩行を始めた時から始まった「人類宿命の病」といわれています。それは、ヒトが直立した時に約5kgもの重さがある頭と、たくさんの臓器を内包する腹部の重さが骨盤を底辺とする腰周辺にズッシリとかかってくるからです。また腰はヒトの前後屈、左右の側屈、ひねりといった動きの支点となります。立っている時、座っている時、活動している時、腰は人体のかなめとして体を支え続けています。その為、腰には疲労がたまりやすく日々のケアは不可欠です。休息、ストレッチ、運動、入浴などで筋肉を適度に休め鍛えること。これらの日々のケアを怠ると慢性腰痛の一歩を踏み出すことになってしまいます。

日本には現在1300万人の腰痛患者がいるといわれていて、この数は医学が発展した現代においても一向に減少していません。その理由は3つあります。一つは病院での画像検査に頼った診断で、ヘルニアや脊柱管狭窄といった骨の変形や構造の異常が原因となった治療が主流となっていること。筋肉の治療の中でも深層筋をターゲットにした治療がされていないこと、患者自身の日々のケア、生活習慣の改善がされていないことです。

慢性腰痛の85%は原因がはっきり特定できない非特異的腰痛(痛みの原因となりそうな疾患や異常がない腰痛)です。それにもかかわらず、整形外科では画像検査の結果からヘルニアや骨の変形が痛みの原因とする診断を行い、治療として投薬、湿布、リハビリを長期間行ったあげく、痛みが消えなければ手術を勧められます。欧米では、20世紀初頭から様々な研究と調査が行われ「ヘルニアがあっても痛みのない人がいる」「手術で神経の圧迫をとっても痛みが消えない人がいる」といった結果から、構造の異常と痛みは必ずしも関係しないという結論が出されました。そして痛みには、運動機能、生理機能(内臓、免疫)、心理機能が大きく関係しているとされ「機能的アプローチ」での診断が行われています。その中で筋骨格系(骨、筋肉、腱、靱帯、関節、軟骨)の痛みやしびれのほとんどは、筋肉の微小な損傷が始まりでおこる『筋・筋膜性疼痛症候群』だと考えられており、筋肉や筋膜をターゲットにした治療が主流となっています。

日本でもマッサージ、整体、カイロプラクティック、ストレッチといった筋肉や筋膜をターゲットにした治療は様々にありますが、何層にも重なった太くて大きい腰の筋肉を最深層まで指でほぐすことは不可能です。前述した通り、腰の筋肉の主な役割は体を支え安定させることです。ですので慢性腰痛とはイコール腰部やでん部の深層筋の痛みなのです。腰の深層筋を直接治療できるのは鍼だけです。しかも深部に届く鍼治療でなければ意味がありません。深層筋の鍼治療と日々のケアを欠かさなければ、慢性腰痛は意外なほどあっさり改善します。

原因

運動器(身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称)に生じる痛みの多くは体にかかった外力(荷重)による組織の損傷が原因です。外力には事故や転倒といった一過性の大きな外力と、不適切な体位や単純で反復する作業のような継続的な外力とがあります。一過性の外力による痛みは「急性痛」で、これは組織に激しい損傷が起きたことによる《炎症の痛み》です。炎症は損傷を受けた組織を防御し修復する過程なので、適切な治療を行い傷が治れば痛みも自然に消えていきます。この一過性の外力による損傷が治癒しているにも関わらず続いている(通常3カ月~6か月)痛みや、明らかな組織の損傷がないのに痛い状態を「慢性痛」といいます。慢性痛の多くは継続的に体にかかる外力で、筋の緊張状態が続き、硬くなった筋肉に血管が圧迫されて起こる《虚血(局所の貧血)の痛み》です。

一過性の外力(荷重):交通事故、スポーツ傷害、転倒、打撲、ぎっくり腰、手術など

継続的な外力(荷重):悪い姿勢、立ち仕事、長時間のデスクワーク、長時間の車の運転、立ったりしゃがんだりの反復動作、重い荷物を持つ労働、中腰での作業、おんぶや抱っこ、寝たきり、ストレスにより体の緊張など

虚血が痛みを発生させる流れはこうです。

継続的な外力(荷重)→筋の中にある筋紡錘(きんぼうすい・筋の伸縮状態を感知する受容器)が興奮→筋緊張の高まり(異常収縮)→筋内圧が上昇→筋膜にかかる圧も上昇→血管の圧迫→血流が低下(虚血)→低酸素によるエネルギー危機→発痛物質の産生・停滞→発痛物質が自由神経終末(痛覚・触覚・温度などの刺激を受容し脳に伝える神経線維の末端)を刺激→痛みの発生

一般に筋肉は柔軟性があって丈夫なイメージがありますが、使いすぎると疲労して硬くなり、使わないでいるとすぐにやせてしまいます。腰痛は肉体労働や激しいスポーツなどによる多動によるものか、運動不足や座る時間の長い生活といった不動が原因です。不動の状態が長いと、関節や骨の近くにある深層筋の筋力が著しく低下して姿勢の保持や歩行が困難になります。また腰は腹部にある内臓の状態が反映する場所でもある為、食生活や喫煙、飲酒などの生活習慣も腰痛をおこす要因となります。

適応症状

腰痛全般。朝起きた時に腰が痛い、動き始めに腰が痛む、体を後ろにそらした時に腰が痛い、体を前にかがめたときに腰が痛い、寝返りをした時に腰が痛む、じっとしていてもズキズキ腰が痛む、長く歩くと腰からお尻が痛い、腰がいつも重だるい、何かの拍子に腰がズキーンと痛む、ぎっくり腰になりそうな感じがあるなど。

施術

通常3つの段階を経て治癒に導きます。

第1段階 痛みを消失させる施術:痛みの出ている筋肉のトリガーポイントを狙い、筋肉の緊張をゆるめ血流を改善させることで痛みを取りのぞきます。

第2段階 痛みや違和感の根本原因を除去する施術:通常痛みを感じている筋肉は根本原因ではありません。ヒトは動き(活動)を通して体を傷めるので、その人の日常の姿勢、動作のクセから痛みが出た場所に負担をかけている部位を特定し施術をします。これにより筋肉の偏った緊張を取り、痛みが出ている筋肉と連動する筋肉(背中、お尻、股関節周辺、太もも、ふくらはぎなど)との動きを整えます。

第3段階 体全体のバランスを整え再発を予防する施術:姿勢や動きに偏りが生じないよう、体幹、上肢、下肢全体のバランスを整えます。施術と並行して、姿勢や動きの指導、ストレッチや運動の提案をします。

施術する代表的な筋群

名称:腰方形筋
片側の収縮で体幹を収縮した方に曲げる。両側の収縮でいきみ、呼気に働く。体幹の側屈に大きく貢献する。この筋肉の働きが悪くなると側腹部の安定が悪くなり姿勢保持に影響を及ぼします。

名称:大腰筋
浅層は第12胸椎から第1-4腰椎から、深層は第1-5腰椎から大腿骨に付着する筋。大腿直筋とともに股関節を折り曲げる(足をあげる動作)。この筋肉にコリが生じると骨盤が過度に前傾し腰痛の元となります。

名称:多裂筋
脊柱起立筋のひとつ。片側の収縮で脊柱を収縮した方に曲げながら反対側に回旋させ、両側の収縮で脊柱を伸ばす作用。上半身の安定、姿勢保持に大きく貢献しています。

名称:腰外側横突間筋
すべての腰椎の隣接する上下の肋骨突起を結ぶ。腰内側横突間筋、頚前横突間筋、頚後横突間筋とともに、片側の収縮で頚椎から腰椎を同側に曲げる、両側の収縮で頚椎から腰椎を安定化し伸ばす作用。

ヒューマン・アナトミー・アトラス 画像の使用 @visiblebodyに感謝します。