五十肩

鍼治療のタイミングは拘縮期初期が効果的

五十肩は、肩関節のなかの腱や靱帯などの一部が損傷、あるいは癒着し炎症が起きることで発症します。男女を問わず50歳前後で多く発症することからその名がついていますが、20代から70代まで、年代を問わず発症する病気です。その理由は、肩関節が他の関節に比べて動く範囲が大きいことと、ヒトが腕を使って行う動作が多い為、機械で言うところの摩耗が激しく、障害しやすい関節だからです。過去に野球やテニス、ゴルフなどのスポーツや仕事で肩を酷使し傷めたことがある人は発症しやすい傾向にあります。また不規則な生活習慣、寝不足、偏った食事、過度なストレス、猫背などの悪い姿勢による肩の血行不良なども五十肩を引き起こす要因になると言われています。

五十肩は発症期(炎症期)通常1~2週間程度、慢性期(拘縮期)6か月程度、回復期1年程度と進行し、治療をしなくても2年ほどで自然に治る病気です。ですが、ちゃんとした治療をすれば1か月~3カ月ほどで治る病気でもあります。発症期(炎症期)は関節内に起こった創傷の治癒過程なので、この時期は安静が第一です。発症期に患部を直接治療すると炎症がひどくなり痛みが増悪するので絶対に患部を触ってはいけません。その後に訪れる慢性期(拘縮期)の初期が積極的な治療を行うベストなタイミングです。なぜなら、この時期は新しい組織が作られる時期なので、このタイミングで鍼治療を行っておくと、肩関節とその周辺の血流がよくなり、組織の修復が促進されるからです。また治療を行うと肩が動きやすくなるため、運動が可能になります。慢性期(拘縮期)はまだ痛みが残ってはいますが、痛みを恐れて肩を動かさない生活を続けていると、可動域が狭くなったまま関節が固まってしまうことがあります。かつては『痛みがあるうちは安静』が提唱されていましたが、いまは五十肩を含め、腰痛も膝痛も『多少痛くても動かす、動く』という治療が主流になっています。ヒトの体は動かすことで健康な状態保てるように作られています。特に関節は骨と骨とをつないで運動を可能にする蝶つがいなので、日ごろからよく動かして、錆びつかないように気をつけましょう。

原因

肩関節とその周辺組織の疲労、古傷の悪化、血行不良、不規則な生活習慣、ストレス、ホルモンバランスの変化、冷え、糖尿病の既往歴、猫背、長時間肩を固定したままの姿勢(PC操作、運転、ピアノ演奏など)

適応症状

肩が痛い。腕が痛い。上着を着る時に痛みが走る。寝返りを打った時に肩に激痛が走る。遠くのものを取ろうとすると腕が痛い。腕が上がらないのでブラジャーがつけられない。腕が上がらないのでシャンプーができない。

施術

通常3つの段階を経て治癒に導きます。

第1段階 動かした時の痛みをとる施術:痛みが出る動作をしていただき、痛みを感じるポイント=トリガーポイントに鍼を行い、筋肉の緊張をゆるめて痛みを取りのぞきます。

第2段階 肩関節の可動域を拡げる施術:狭くなった可動域を拡げる施術を行います。「結帯(けったい)=後ろに手をまわし帯を結ぶ動作)」と「結髪(けっぱつ)=頭の上で髪を結わう動作)」がスムーズに行えるよう、肩甲骨周辺と上腕を中心に施術を行います。

第3段階 体全体のバランスを整え再発を予防する施術:痛みをかばう代償作用として筋肉の偏りが生じている部位の施術を行い、体幹、上肢、下肢全体のバランスを整えます。

施術と並行して、肩に負担のかからない姿勢や動きの指導、ストレッチや運動の提案をします。

施術する代表的な筋肉

名称:棘上筋
肩関節の安定性を保つ働きをするローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲挙筋)のひとつ。上腕(肘から上の部分)を体から離す(例:腕を水平に挙げる)、外側に回転させる(例:上着を着る)作用。僧帽筋の下層にあるいわゆる肩こり筋。

名称:棘下筋
肩関節の安定性を保つ働きをするローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲挙筋)のひとつ。上腕(肘から上の部分)を体の外側に回転させる(例:上着を着る)作用。棘下筋の機能低下で肩関節が上方や前方にずれやすくなります。

名称:小円筋
肩関節の安定性を保つ働きをするローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲挙筋)のひとつ。上腕(肘から上の部分)を体の外側に回転させる(例:バックを腕にかける)作用。棘下筋とともに肩関節の後方の動的安定に貢献しています。

名称:前鋸筋
肩甲骨を回転させて腕を挙げたり下げたりする、肩甲骨が固定されていれば肋骨を引き上げて吸息を補助する作用。長時間のパソコン作業で酷使される筋肉。猫背、巻き肩の人にコリが顕著な筋肉。

ヒューマン・アナトミー・アトラス 画像の使用 @visiblebodyに感謝します。