体を動かす表層筋、体を支える深層筋

私たちの体に動きを与える「骨格筋」の総数は約400個で重さにすると体重の約50%を占めます。

この骨格筋は身体の深いところ(骨格近く)に位置する筋肉=深層筋(インナーマッスル)と、身体の表面(皮膚近く)に位置する筋肉=表層筋(アウターマッスル)とに分けられます。

表層筋は、筋線維が太くて長くて強いといった特徴があり、歩く、走る、投げる、持ち上げるなど、動作時に主に力を発揮する筋肉です。

僧帽筋
広背筋

筋肉名でいうと、僧帽筋、広背筋、上腕二頭筋、大殿筋、大腿四頭筋などが表層筋に分けられます。

表層筋は重い荷物を持ち上げたり、ダッシュで走ったりする時など、瞬間的に大きな力を出すことができるものの、エネルギー消費量が多いため、その力を継続し続けることはできません。組織の老化が早く、20歳前後から急速に衰える(痩せる)筋肉といわれています。浅層筋は外から筋肉の形が解るため『見た目のカラダ』を作る筋トレのメインターゲットです。

一方の深層筋は、骨や関節、背骨の周辺といった身体の深い場所にある筋肉の総称です。筋線維は細くて短くて弱いという特徴があり、立ち上がりや動き出し、じっとしている時などに骨や関節を支える働きがあるため、私たちが起きて活動している時は常に働いている筋肉です。

脊柱起立筋群
腸腰筋

筋肉名でいうと、後頭下筋群、脊柱起立筋群、腹斜筋、腸腰筋、ヒラメ筋などが深層筋に分けられます。

深層筋の収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の力を維持することができます。

深層筋は外からは形も働きも確認することはできませんが、私たちの体の土台、動きの土台となっているとても重要な筋肉です。深層筋は表層筋と比べて、年齢を重ねても衰えにくい筋肉といわれています。

深層筋は縁の下の力持ち

騎手が浅層筋で騎馬が深層筋

表層筋と深層筋の機能の違いをイメージしてもらう為に、小学生の頃に運動会でやった騎馬戦を思いだしてください。

3人で構成された騎馬が深層筋で、騎馬にまたがっている騎手が表層筋です。騎手がしなやかでダイナミックな動きをするためには、騎馬がしっかりと騎手を支え体を安定させておく必要があります。ガチンコ勝負である騎馬戦の勝敗の決め手は、ぶつかったときにも動じないしっかりとした騎馬にあると言われていまです。

それと同じように、私たちの体が動くときは深層筋がしっかりと骨と関節を固定し、頭や手足、指が自在に動いて、家事や労働、様々なスポーツが出来るように支えているのです。深層筋は私たちの体と活動を支える大切な『縁の下の力持ち』なのです。

表層筋(アウターマッスル)と深層筋(インナーマッスル)は、解剖学的な分類で用いられる言葉ではなく、エクササイズや施術の便宜上使用されているものです。深層筋は、深部筋、ローカル筋、コア筋、姿勢保持筋と呼ばれることもあります。

表層筋の深層筋と対比表

これまで書いた表層筋と深層筋の違いを表にまとめると以下のようになります。

表層筋(白筋、速筋)深層筋(赤筋、遅筋)
体の表面=皮膚に近い場所体の深部=骨や関節周辺
収縮持続時間が短い持久性に富む
疲労しやすい疲労しにくい
エネルギーは主に酸素を利用せず糖の分解で産生するエネルギーを有酸素代謝によって得る
毛細血管の分布は少ない血管分布が比較的豊富
ミトコンドリアが少ない=基礎代謝が低いミトコンドリアが多い=基礎代謝が高い
加齢や運動不足で容易に萎縮(やせる)しやすく、常に強化運動が必要である短縮傾向に(安静時筋緊張が増加して硬くなる傾向)にあり、定期的に伸展させる必要がある
僧帽筋、広背筋、上腕二頭筋、大殿筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、前鋸筋、腓腹筋など肋間筋、咀嚼筋、脊柱起立筋、腸腰筋、ヒラメ筋、内転筋群、ハムストリングス、大腿直筋など

深層筋の役割

  1. 姿勢の保持
  2. 背骨の安定
  3. 骨盤の安定
  4. 内臓の安定と働きを助ける
  5. 関節の安定と動きの微調整

深層筋の治療で期待される効果

  1. 痛みが軽減する
  2. 関節の可動域が広がる
  3. 姿勢が改善する
  4. スポーツのパフォーマンスが向上する
  5. 基礎代謝が上がり太りにくい体質になる
  6. 下腹部に脂肪がつきにくくなる
  7. 自律神経の機能が安定する