首こりの原因:その2『腕の疲労性の首こり』

腕と首は間接的、直接的につながっている

当院に来院される患者さんの症状で最近多いなぁと思うのがこの『腕の疲労性の首こり』です。特に女性に多いような気がします。“腕の疲労と首のこりって関係するの?”と思われるかも知れませんが、これが大いに関係しているのです。腕と首の関係が一番解りやすいのはダンベル運動です。重いダンベルを持ち上げる人を前から見ると、首の前側に太い筋が出ています。これは歯を食いしばって重さに耐えているからなのと、大胸筋を動かすと首の前側の筋肉も連動して動くからです。そんなに重いダンベルでなくても、持ち上げる時は必ず首に力が入っているのを感じることができるはずです。腕を動かすと首の筋肉も同時に動くその理由は、筋膜や腱を通して間接的につながっているからと腕の運動を担う肩甲骨と首はつながっているからです。

腕と首に限らず全身の筋肉は筋膜を通して隣り合う筋肉とつながっています。身体を動かすための筋肉=骨格筋は400~600あり、それらの筋肉が筋膜によってつながり連動して身体活動を行う為、私たちの体は筋膜という全身を覆うボディースーツを着ているようなものなのです。その為筋膜の一部にひきつれが生じると体全体に、あるいは特定の部位に影響を与えます。疲労して固くなってしまった筋肉はひきつれた布と同じような状態なので、腕の筋肉の疲労は肩へ、そして肩から首へと伝播していきます。

ここで皆さんは“私はデスクワーカーだから腕はそんなに使っていないよ”と思われたかも知れません。確かにデスクワークは重い荷物の上げ下ろしといった大きな力を出す筋肉(アウターマッスル)はあまり使いませんが、キーボードやマウスの操作などの指先で繊細な動きを必要とする動作は、手首、肘、肩の筋肉(インナーマッスル)をしっかりと固定する必要があります。さらに手首、肘、肩をしっかり固めるには、背骨や腰回りも動揺しないよう安定させておく必要があります。この状態はピアノを弾く姿勢を似ています。ピアニストは音楽に合わせて体をゆらしたり、強弱をつけて鍵盤をたたくのでまだ動きがありますが、オフィスワーカーのタイピングやマウス操作は手首から先以外はしっかりと固めて(固まって)います。そのような姿勢での作業が1日何時間もあり、それが毎日続くとあっては相当な疲労だと思いませんか?

ためしにキーボード操作による手や腕の疲労をチェックしてみましょう。効き手の親指と人差し指の間の水かきのようになっている部分や、そこから肘までの延長線上にある筋肉を押してみてください。固くなっていませんか?痛みはないですか?ここはマウス操作時の親指の動きに必要な筋肉です。パソコン作業が長い人はこの辺りがカチカチになっています。そしてとても痛いと思います。このように毎日行っているパソコン操作は指や手首、腕の筋肉を疲労させています。その日々の疲労が解消されないと、そのうち筋肉は固く縮んだひきつれとなって肩から首に影響し、深い首こりとなってしまうのです。

肩甲骨は第二の骨盤

突然ですが「肩甲骨は第二の骨盤」と言われているのをご存知でしょうか?

骨盤は膀胱、尿道、直腸、生殖器などの内臓の保護、脚の運動、体を支えるなど、重要な役割をいくつも担う骨です。その為骨盤に何らかの理由でゆがみというかズレが生じると、体の様々な場所に影響が及び健康を損ねる要因となります。ちまたに骨盤矯正などの整体院が多く存在するのは、それほど骨盤が人体の健康にとって重要な骨であるからでしょう。実は肩甲骨はその骨盤と並び称されるほど重要な骨なのです。

骨盤の重要な役割の一つは体を支えることです。四足動物では前足で肩甲骨を、後ろ足は骨盤を土台にして体幹を支え体を動かしていますが、二足歩行となった人間の体を支える役割はほぼ骨盤が担うようになりました。しかし重い頭と自由に動く腕は、骨盤ではなく上半身にある肩甲骨が土台となって支えています。これが肩甲骨が第二の骨盤と呼ばれるゆえんです。この重要な役割を担う為、肩甲骨には17もの筋肉が付着しています。肩甲骨と腕、肩甲骨と首(頸椎)、肩甲骨と脊椎(背骨)、肩甲骨と肋骨など。まるで肩甲骨を起点にして放射状に上半身の筋肉が張り巡らされているかのごとくです。

筋肉は両端で腱となり関節をまたいで骨と骨に付着し(骨に付着しない筋肉もあります)、収縮することで体に動きを与えています。筋肉が疲労した状態(こった状態)というは、筋肉が縮んでゆるまなくなった状態なので、その筋肉が付着している骨と骨の距離を縮め、関節の動きを変えます。これにより本来の身体のバランスが崩れ、腕、肩、首の動きが悪くなったり、疲れやすくなったりしてしまうのです。また肩甲骨は鎖骨と胸郭に関節(結合)しています。鎖骨と胸郭は呼吸に関係する骨なので、肩甲骨の位置のズレは深い呼吸をする妨げとなり、交感神経を亢進させる要因ともなってしまいます。最近、骨盤矯正と同様に「肩甲骨はがし」なる整体院が増えているのは、肩甲骨の重要性、そして現代人に多い首・肩こりとの関係が注目され始めているからです。

意外に気づきにくい「腕の疲労性の首こり」

首こりの症状改善には、治療と併せて原因となっている姿勢や生活習慣、環境などを改善する必要があります。「姿勢性の首こり」はご本人も自覚がある事が多いのですが、「腕の疲労性の首こり」には自覚がない人がほとんどです。それは姿勢と違い肩甲骨を土台とする腕(肩)の正しい位置が理解されていないからだと思います。

では、腕を正しい位置に置いてみましょう。まず、足を肩幅に開き、力を抜いて立ってみます。その時の肘、手のひらの向きはどうなっていますか?正しくは、肘は後ろに、手のひらはやや前を向いているのが正しい腕(肩)の位置です。もし肘が正面よりに向いていたり、手のひらが完全に後ろを向いていたら、肩甲骨が外に開いて、肩が体の中心に向かってロールしたようになる「巻き肩」になっています。巻き肩になると胸の筋肉も縮んで背中が丸まるため、首はバランスを取るために前に突き出てくるので、首の筋肉が疲労しやすくなります。

腕の正しい位置を守って「腕の疲労性の首こり」を作らない為のポイントは3つ

  1. 肩甲骨を体の中心に寄せること 
  2. 脇を閉めること 
  3. アゴをひくこと

パソコン操作をするとき、重い荷物を持ち上げる時、何かを体の方に引き寄せる時、バッグを持つときetc。この3つを守ると腕にかかる重さを体幹で受け止めることが出来るので、腕の疲労はぐっと軽減させることができますよ。最後にもう一つ。パソコン操作の時は上記の3つに合わせ、肘はかならず机に乗せて、腕を支えるようにしてくださいね。なにせ腕は片腕で3kg(体重の約6%)もあるのですから。

まとめ

腕と首は腱や筋膜、筋肉を通してつながっているので、腕の疲労は直接、間接的に首の疲労を招いてしまいます。「腕の疲労性の首こり」はなかなかご自身で自覚しづらい首こりです。まずは、スマホやパソコンの操作は意外と腕を酷使しているということを理解して、腕(肩)の正しい位置を守り疲労を軽減させましょう。ムキムキ志向の殿方は、筋トレのしすぎにもご注意を。

ヒューマン・アナトミー・アトラス 画像の使用 @visiblebodyに感謝します。

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