首こりの原因:その3『目の疲労性の首こり』

深刻な現代人の目の疲労

「目の奥がジンジンする」「目が乾いて瞬きをせずにいられない」「目の玉が動かしづらい」「目頭が固まった感じがする」「目を開けているのがつらい」「目の奥が熱い」。これらは当院にいらした患者さんが訴えた目の症状です。

オフィスでのPC作業に加え、片時も手放せなくなったスマホの使用によって、目は朝起きたから夜眠るまで酷使され続けています。厚生労働省が行っている『技術革新と労働に関する実態調査』でも、オフィスワーカーが感じる身体的疲労のトップは「目の疲れ・痛み」で、次いで「首、肩のこり・痛み」、「腰の疲れ・痛み」となっており、現代人の目の疲労の深刻さが伺えます。オフィスワーカーにとって無縁ではいられないこの目の疲労。実は「首こり」と密接な関係があります。

後頭下筋群と眼精疲労

目の疲労と首こりに最も密接に関係しているのは、目の眼球運動と連動して働く後頭部の筋肉=後頭下筋群です。後頭下筋群は、首の境目にある小さな8つの筋肉(左右に一対ずつある大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)で、目の動きに合わせて頭の動きを調整しています。

目はつねに対象物を網膜の中心でとらえようと動いています。しかし目だけでは視野が狭くなるため頭部の動きを加えて対象物を見ています。視野を広くとるには頭を動かしながら対象物を目で追うのが最良なのですが、頭部には人体にとってとても大切な脳が収まっています。人体は脳と心臓に代表される生命維持に必要不可欠な臓器にはできるだけ負担をかけないようにする為、眼球運動の際も視野は広げつつ、極力頭部を動かさないように首と頭の境目の筋肉=後頭下筋群を緊張させて頭の動きを制御しているのです。

PCやスマホをする時、人込みを歩く時、電車に乗っている時、人は目に入ってくる情報(対象物)を追って常に動く眼球に左右されないように首は5,6kgもある頭をしっかりと固定しています。言わば首は目の動きを支える縁の下の力持ちとして活躍しているので、目の疲労はイコール首の疲労となるのです。

目と脳の深い関係

人も含めた生物は安全に生きて行く為に、いかに早く周りの状況をキャッチできるかがとても重要です。その為に視覚、聴力、嗅覚を存分に駆使し、今自分が置かれている状況を脳に伝え適切な行動を取っています。脳に送られる情報の中でも視覚=目からの情報は全体の約80%と言われていて、人がいかにから多くの情報を目から得ているかがわかります。現代社会では、生存の為の情報だけでなく、ゲームにネット、動画の視聴などなど目から取り入れる情報は膨大になり目の負担は増すばかりです。

目を始めとする感覚器や筋肉、内臓から入力された情報を整理、処理し適切な反応を指示するのは人体の総司令部である脳。脳はあらゆる器官から入ってくる膨大な情報を処理することに日々追われています。また近年まで自然界にはなかった電波・磁波・光・色・音・震動などにさらされていることも脳には相当な負荷となっています。脳への情報伝達の80%を担っている目の使い過ぎは、脳の仕事量をさらに増やし疲労を招きます。夜眠る直前までPCやスマホを操作し『体は疲れていて眠りたいのに頭が冴えて眠れない』というのは、まさに脳がオーバーヒートしている状態と言えます。

人体の器官が働くためにはエネルギー=酸素と栄養が必要です。そして、酸素と栄養を運ぶのは血液です。目を始めとする頭部の器官に血液を届ける血管(動脈)はすべて首を経由し、それぞれの器官を栄養しています。目を使う、ということはたくさんの血液が目に届けられなければいけません。また、脳への血液供給は絶対に途絶えてはいけないものです。首がこると固くなった筋肉が血管を圧迫し、脳を始めとする頭部器官への血流障害が起こることで、それぞれの器官の機能低下を招きます。また、目と脳の使い過ぎで頭部への血液供給が活発になり代謝産物の除去が追いつかなくなると、首や頭部に静脈血が滞留し全身の循環障害を起こすこともあります。

これまで見てきたように、目の疲労性の首こりは、目の疲労か先か、首の疲労が先かという、鶏と卵のような関係ですが、いずれにせよ双方は深く関わっていることに間違いはありません。あなたが今、目に起こる症状(ドライアイ、充血、目のかすみ、目の痛みなど)を抱えているのなら、それは「目を閉じて、目と脳をしっかり休養させよ」という体からの警告です。その体の声をしっかり受け止めてください。

まとめ

広い視野の確保と大切な脳を守る為、眼球運動合とわせて後頭部の筋肉は一緒に動いています。そして、目から入力される膨大な情報量は、脳によって処理される為、目の疲労はすなわち、脳と首の疲労をも生んでいるのです。電子機器が日常生活になくてはならなくなった現代。この「目の受難期」のような時代においては、意識して目からの情報のシャットアウトと脳のクールダウンを行う必要があります。くれぐれも眠る前のスマホの使い過ぎにはご注意ください。

ヒューマン・アナトミー・アトラス 画像の使用 @visiblebodyに感謝します。

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