施術の基本方針
その方の「今」をカラダとココロの両面から診ます。
当院では、西洋医学の「解剖学」と「生理学」を基礎にして症状を診ていますが、東洋医学的な「病態(=患者さんの自覚症状や心身に現れる症状)」にも考慮しています。
ヒトの体は構造的には同じでも、動きのクセ、姿勢のクセ、考え方のクセがあります。またその時の生活環境や生活習慣によっても体の機能には様々な違いが現れます。そんな一人一人の違いを、症状をとらえる上での大切な視点にして、その方にあった施術とセルフケアの指導を提供しています。
施術の特徴
1.体を部分ではなく、筋膜のつながりでとらえています

当院では体の痛みを、部分的な障害ではなく、全身を覆う筋膜(筋肉)の張力のひずみと考えます。
筋膜は個々の筋肉を覆っていると同時に、ヒトが効率的に動く為に身体の様々な部分でつながり、いくつかのライン(東洋医学でいうところの経絡(けいらく))になっています。そして筋膜は、すべての器官,神経、内臓などを覆って連結している人体の張力ネットワークです。
この筋膜の張力バランスが良ければ、姿勢や動作が安定するので、どこかの部位に過剰な負担がかかることはなく、血液、神経(感覚神経、運動神経、自律神経)、リンパ液の流れもスムースになります。
当院では、部分に生じている症状だけにとらわれず、体全体を働かせる機能と、快適に動く為の骨格バランスを整えることを目指しています。
2.「触れる」というアナログな情報収集にこだわっています

東洋医学と西洋医学の最大の違いは「触れること」にあります。
東洋医学では施術者の手の感覚を頼りに、皮膚の温度や張り、筋肉や内臓の緊張状態などで、患者様の『今』の体の状態を把握します。
近年、筋膜の異常を探す超音波エコーや測定用マットを用い筋肉の状態をグラフ化する技術も進歩していますが、複雑に重なり交差する筋肉の状態を確認し、異常を見つけるには、実際にたくさんの人の身体に触れて獲得した「鋭敏な手の感覚」が一番だと思っています。
当院には、検査機器ではとらえられない筋肉の異常、自律神経の影響による体の変化を感知できる手の技術があります。
3.はりを筋肉の内視鏡のように使うオリジナルな施術をしています

当院が行っているはり治療は、私のはりの先生である「治し家鍼灸院」の角谷敏宣先生が考案した「深層筋鍼法(しんそうきんしんぽう)」を元にしています。
『深層筋鍼法』の特徴
①繊細な日本の鍼を使用するため、身体への負担が少い
一般的に深層筋をターゲットにしたはり治療は、太くて長い中国式の針を用い筋肉にぐっと押し込むように刺すため、刺激が強く体への負担も大きくなります。
『深層筋鍼法』は日本式の細い鍼(直径 0.16~0.25 ㎜。中国針は直径 0.3~0.45 ㎜)を用い、少しずつ深部にはりを進めていくので、体への負担がとても少ない施術です。痛みに苦しむ患者様にさらなる痛みを与えることはありません。
※現在日本の鍼灸学校では、体に深く刺す技術は教えていない為、日本の鍼を使った深部組織の治療は特別な訓練を受けたものにしかできません。
②はりが体に入る時の痛みがない
一般に患者様がはりが痛いと感じられるのは、はりを刺された瞬間だと思います。東洋医学でははりを体に刺すことを「切皮(せっぴ)」と言い、この時に感じる痛みを「切皮痛(せっぴつう)」と言います。この切皮痛は、はり治療の際に必ずある痛みではなく、施術者の経験不足と訓練不足によって生じます。
不快な痛みを感じる施術は、交感神経を優位にし、体がゆるむどころか緊張でさらに固まってしまいます。たまに〝痛いほうがはりが効いている”という鍼灸師がいますが私は賛成できません。『深層筋鍼法』には切皮痛はありません。患者様からは「いつ刺したんですか?」と聞かれるほどです。はりが初めてでちょっと不安という方や、以前にはりをしたけど痛くて嫌だったという方にも安心して受けていただけます。
③深層の筋膜と筋膜、筋膜と骨膜の癒着を取れる
慢性痛の約80%は筋肉が原因で起こる筋膜性疼痛症候群(MPS)と言われています。筋膜性疼痛症候群とは筋肉を覆う筋膜(筋外膜)の異常が、原因となって痛みやしびれを引き起こす病気のことをいいます。この筋膜が萎縮したり、筋膜と筋膜、筋膜と骨膜が癒着することで筋硬結(きんこうけつ)と呼ばれる組織のしこりができ、そこにトリガーポイントが発生します。
現在この筋膜をターゲットにした治療には、患部に生理食塩水や局所麻酔薬を注射する方法、鍼、徒手(マッサージ、整体などの手技療法)などがあります。
生理食塩水の注射は患部に水分を浸透させ癒着を解放するもので、局所麻酔薬の注射は痛みの伝達を遮断します。注射針とはり治療の鍼は同じハリでも太さが全くことなります(鍼治療の鍼:直径0.14~0.25㎜。注射針:直径0.7~0.9㎜)。注射針は中に液体を入れる為とても太く、先端が鋭利なので組織に傷をつける可能性があります。また生理食塩水や麻酔薬などの液体を注入する方法はその効果が一時的です。
当院が行っている『深層筋鍼法』は、トリガーポイントにピンポイントでアプローチし、筋膜や骨膜の癒着をはりの刺激によって取り除いてく手法なので、体への負担が少なく効果を確実に出すことが可能です。
④はり治療独特の反射をおこし、体を瞬時に変化させる
当院では多くの鍼灸院が行っている、はりを何本も刺した後に一定時間放置したり、刺した鍼に電気を通す施術は行いません。なぜなら何年何十年物のコリや頑固な筋膜の癒着ははりを刺しただけでは取りのぞけないからです。
当院が行っている『深層筋鍼法』の流れはこうです。
指で丹念にトリガーポイントを確認→はりが体に入ったら少しずつ深部へと進める→はりが患部に届いたらそこではりを上下させ、刺激を繰り返す→ズーンというはりのひびきを感じる(「局所単収縮(きょくしょたんしゅうしゅく)」→筋肉が瞬時にゆるむ。
このように『深層筋鍼法』は施術者がつきっきりでトリガーポイントを一か所一か所つぶしていく、とても手間のかかる手法です。ですが、この手間のかかる手法だからこそ、何年何十年ものの頑固なコリをきれいに取りのぞくことが可能なのです。
はりのひびきとは?
はりの刺激によって体の深部にズーンとした感じが起こるはり治療独特の感覚。皮膚や筋、靱帯、骨膜や関節包などに広がっている神経や受容器が刺激されて起こる。この刺激により患部の感覚神経⇔運動神経が活性化され、筋肉がゆるむと考えられています。「ひびき」は“痛い!”という人も〝気持ちいい~”という人もいて、感じ方は人それぞれです。いずれにせよ、注射のように鋭く強烈な痛みはありませんのでご安心ください。
4.その方にあったセルフケアの指導を行い再発を防ぎます
慢性痛の多くは体に継続的な外力(悪い姿勢、同じ姿勢、反復動作、スポーツなどによる使い過ぎ)がかかったことで筋の緊張状態が高まり、筋組織がエネルギー危機(虚血)となったことが始まりです。
はり治療は血流を改善させ筋の緊張状態を解消することはできますが、筋肉を柔軟に保つこと、筋力をつけること、正しい姿勢を維持することは出来ません。真に慢性痛を克服するには治療だけでは不十分で、患者様自身の努力が不可欠です。
当院では症状を早期に改善する為に、治療と並行して日常生活や職場で簡単にできる、姿勢の整え方、楽な体の使い方、効率的な体のほぐし方といったセルフケアの指導をしています。
慢性痛が日々の積み重ねで生じたように、健康を養うのも日々の積み重ねです。治療を通してセルフケアの大切さを理解し実行していただけるよう、その方にあった無理のない方法をお伝えします。
「深層筋鍼法」の創始者角谷敏宣先生からメッセージをいただきました

姜先生は私の「深層筋鍼法」を求めて、なおし家鍼灸院で2年間スタッフとして臨床を重ね、その技法をしっかり身につけてくれました。その後独立され、「深層筋鍼法」を使って運動器疼痛を専門に多くの患者さんを施術してこられた実力のある先生です。
「深層筋鍼法」は、IT社会が作り出したパソコン、スマホ病など現代病に適応でき、また筋肉、腱が原因となっている五十肩や坐骨神経痛などの慢性病を改善し、パニック障害、自律神経失調などの現代の心身疾患にも効果のある鍼法です。なぜなら、1本の鍼を内視鏡のように使い、体の深部にある太い血管や神経、リンパ管の機能を阻害している深部のコリを溶かすことができるからです。
そのような鍼法を姜先生は身につけ発展させて、より効果のある施術法を行っておられます。
しかも姜先生は私と同じ誕生日(1月30日)の水瓶座!気さくで親しみやすいお人柄です。自信を持って姜先生をご推薦いたします。
なおし家鍼灸院 院長 角谷敏宜