なかなか治らない首痛を起こす5つの要因

スマホやタブレットが今ほど普及する前は「首こり」という言葉をあまり聞かなかったと思いませんか?これまで「こり」と言えば「肩こり」が代表的で、CMやドラマに登場する疲れた人は必ずため息をついて肩をポンポンと叩いていました。最近では「首こり」を話題にした雑誌やネットの記事も多く見かけるようになり「首こり」もすっかり一般的になりました。「首こり」が注目され始めたことで、自分はずっと肩こりがひどいと思っていたけど、本当は首がこっていたんだと自身の「首こり」に気づかれる人もいらっしゃるのではないでしょうか?

首こりを起こす5つの要因

今やすっかり市民権を得た「首こり」。
メディアで取り上げられる「首こり」の原因のトップは、何といっても首を前につきだしたり、下を向いて行うパソコンやスマホの長時間操作ですが、それ以外にも「首こり」を起こす要因はいくつもあります。以下に代表的な5つの要因をあげます。

  1. 日常的な猫背、パソコン、スマホの操作時に悪い姿勢になって起こる『姿勢性の首こり
  2. パソコン操作や労働で腕を酷使する事によって起こる『腕の疲労性の首こり
  3. 目の使いすぎ、合わない眼鏡やコンタクトの使用によって起こる『目の疲労性の首こり
  4. 歯のみ合わせが悪い、仕事中や就寝中に無意識に行っている『食いしばりによる首こり
  5. 精神的、肉体的に緊張状態が続いていることによる『自律神経の失調による首こり

それぞれの「首こり」がなぜ起こるのか、首のどの部分に症状が現れるのかを当院の臨床例を元に数回に渡って解説したいと思います。
解説の前にまずは首の構造を見てみましょう。

首は重い頭を支え、上肢帯(鎖骨、肩甲骨)とつながっている。

上の画像は上半身を斜め後ろから見た図です(僧帽筋、広背筋は取りのぞいています)。ご覧の通り、首と頭、首と背中、首と腕、首と肩甲骨とは、いくつもの筋肉が様々な階層でつながっています。
頭部の重さは体重の約8~10%で、体重が50kgの人なら約5kgあります。この重い頭は軸椎(頸椎2番)の歯突起という突起にすっぽりとはまり、7つの頚椎、12の胸椎、5つの腰椎、5つの仙椎、尾椎の計30個の骨の重なりが自然なS字カーブを描くことで支えられています。もしもこの重い頭部が正しい位置(ニュートラルポジション)から離れ、2.5cm前に出ると首にかかる負担は4kg増すと言われています。オフィスでパソコン操作に熱中にすると首はどんどんモニターに近づき、おそらく6~9㎝くらいは前にでているのではないでしょうか。そうなると首にかかる負担はなんと約12㎏!これはウオーターサーバーに通常取り付けられているボトルよりも重さです。これほどの重さが首にかかれば「首こり」になるはずです。

首は腕にかかる力を受け止める

この重量挙げをしている男性の首をみてください。
重いバーベルを持ち上げ、その重さに耐えている男性の首の前面、両側に太い筋が浮かびあがっていませんか?重量挙げやダンベルなど、かなり重いものを持ち上げないと意識しずらいのですが、腕と首はつながっています。それは肩甲骨という腕の運動(上げたり下げたり、前後左右に動かしたり、回したり)のすべてに関わる骨が鎖骨にくっついていて、鎖骨は筋肉によって首とつながっているからです。肩甲骨に作用する筋肉は、僧帽筋や大胸筋を始め、身体の前後にある胸から上の筋肉すべてなので、腕の疲労は肩から首へと影響を及ぼします。当院にいらっしゃる男性の患者さまで重いウェイトの筋トレや懸垂のやりすぎで首こりを起こしている人が結構います。女性では重い頭を抱えてシャンプーをする美容師さん、乳幼児のお世話をしている保育士さんに腕の疲労からの首こりが多く見られます。自分のこりが肩こりなのか首こりなのかわからないという人が多いですが、肩こりのある人は必ず首こりもあります。

首と顎の関係はあなどれない

前述しダンベルを上げる男性の例ですが、重いものを持ち上げた時に首にすじが出るのは、奥歯をぐっと食いしばり腕に力をこめるからです。歯を食いしばると、顎から首、肩、頭部と想像以上に広範囲の筋肉が緊張します。そして「首こり」を訴える人の多くに食いしばりの癖があります。食いしばりは寝ている間だけにみられる癖ではなく、仕事をしている日中にも見られます。眠っている間の食いしばりで顎にかかる力は、食事をしているときの約3倍、100㎏近い力があると言われています。堅焼きせんべいを食べる比ではないのです。
食いしばりをする原因は、前歯を使わない噛み方、不正咬合(かみ合わせの悪さ)、合わない歯科金属、ストレスなどが挙げられています。食いしばりが強くなると顎関節症の症状が出ることもあるので要注意です。顎関節は頭蓋骨と関節をなしているので、顎関節のゆがみが噛んだ時の力を頭蓋骨に伝え、頭蓋骨までゆがませてしまう可能性があるとのこと。顔が非対称だ、という方は食いしばりや顎関節症を疑っても良いかも知れません。

近年注目され始めた、首こりと自律神経の関係

首と頭蓋骨の境目には自律神経(循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整する神経。 交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)がバランスを取りながら働いている )が密集しています。特にブレーキである副交感神経は首に多く存在します。
皆さんは「不定愁訴」という言葉を聞かれたことがありますか?
頭が重い,肩が凝る,腰が痛い,イライラするといった、何となく体調が悪いという自覚症状があるのに、検査をしても原因となる病気が見つからない状態のことを言います。この症状を持つ人は、体のあちこちに症状が出る為、その度に該当する診療科を受診しては「検査では何も問題はありません」「原因はみつけられませんでした」と言われて途方にくれています。ひどい時は、心療内科の受診を進められ「うつ病」と診断されていることもあるようです。
不定愁訴の原因は様々なストレス、ビタミン欠乏、ホルモンバランスの乱れにあると言われていますが、近年「首こり」が原因で起こる自律神経の失調も挙げられています。
前述した通り、首と頭蓋骨の境目には自律神経が集中しているので、この部分がコリによって圧迫されると、情報の伝達不良が起こったり、交感神経と副交感神経の伝達ホルモン物質にかたよりが生じ、どちらかの神経が亢進(高ぶる)してしまうのです。現代人の生活は交感神経(アクセル)が優位になりがちなので、「首こり」は体の機能にブレーキが利かない状況を作ってしまうようです。

まとめ
首がこるのは「姿勢」「腕の疲労」「目の疲労」「食いしばり」「自律神経」が原因です。首は頭部、腕、顎といった器官と筋肉や骨によって物理的につながっているだけでなく、自律神経を介して脳や全身の器官とつながっています。 つながっているという事はお互いに影響を受けあってしまうということ。それゆえに首こりは“たかがコリ” と放置してしまうと、思いがけない症状が次々と現れてしまう危険なコリなのです。
次回からは『首こりを起こす5つの要因』を臨床例と合わせてご説明していきます。

ヒューマン・アナトミー・アトラス 画像の使用 @visiblebodyに感謝します。

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