頚性神経筋症候群とは首の筋肉が原因の病気です
頚性神経筋症候群は、首の筋肉が硬くなった状態が慢性化して、難治性の不定愁訴(原因不明の頭痛・めまい・疲労・多汗・不眠・胃腸症・血圧不安定など)を引き起こす病気のことです。筋筋膜性疼痛症候群の一種で、首の筋肉に起こるものを指します。
筋肉の状態は画像や血液検査には現れず、頚性神経筋症候群の症状は多岐にわたるため、病院では「不定愁訴(原因が特定しにくい症状)」として考えられてしまうこと多くもあります。
頚性神経筋症候群の原因
頚性神経筋症候群は、首の筋肉の過緊張(首こり)が首に密集している自律神経を絞扼し、その働きに異常が起きて(交感神経と副交感神経のバランスが崩れる)様々な症状が引き起こされると考えられています。
頚性神経筋症候群を含む筋筋膜性疼痛症候群が発症する原因は様々で、多くの場合、複数の要因の組み合わせによって起こります。
1.首への一過性の外力:大きな力が急激に体にかかる
例)スポーツでの頭部や頸部への外傷、転倒して頭部を打撲、ムチウチ、寝違え、外科手術など。
2.首への継続的な外力:同じ力が特定の筋肉に繰り返しかかる
例)猫背、長時間のうつむき姿勢、不正咬合、喰いしばり、肉体労働、過度な筋トレなど
3.ストレス:精神的な緊張によって体を硬直し、それが継続的な外力となる
4.筋肉の量と質の低下:老化、運動不足により外力(重力)に対応できなくなる
5.栄養不良:栄養のアンバランス、欠乏が筋肉や筋膜の異常を招く
頚性神経筋症候群の症状
頚性神経筋症候群は、首のコリが自律神経を絞扼し、その働き(特に副交感神経)を阻害することで起こります。その為、自律神経がつかさどっている、呼吸、体温、血圧、心拍、消化、代謝、排尿・排便のすべてに機能異常が起きる可能性があります。
頚性神経筋症候群の症状
- 首の痛み
- 慢性的な首・肩こり
- 慢性的な眼精疲労
- 目の奥の痛み
- 頭がのぼせる
- 顔がむくむ
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- のどのつまり感
- 寝ても疲れがとれない
- やる気が出ない
- 倦怠感
- 不眠
- 血圧が不安定
- 微熱がでる
- 多汗
- 突然の動悸や息切れ
- 集中力の低下
- 下痢・便秘を繰り返す
首こりが原因で起こる疾患
- 緊張型頭痛
- めまい
- 自律神経失調症
- うつ
- パニック障害
- ムチウチ
- 更年期障害(難治)
- 慢性疲労症候群
- ドライアイ
- 多汗症
- 不眠症
- 機能性胃腸症
- 過敏性腸症候群
- 機能性食道嚥下障害
- 血圧不安定症
- VDT症候群
- ドライマウス
- 便秘症
- 起立性調節障害
頚性神経筋症候群の判断基準
頚性神経筋症候群は、新しい概念であり、まだその存在を認めていない医師がいるため、一般の医療機関では診断、治療が困難なのが現状です。病院を受診される場合は、事前の確認をおススメします。
ここでは頚性神経筋症候群の診断に使用されているチェックシートをご紹介します。
- 頭が痛い、頭が重い
- 首が痛い、首がこる
- 肩が張る、肩がこる
- 風邪をひきやすい
- めまいやふらつきがある
- 振り向いたときや歩行中に不安感がある
- 吐き気がある
- 夜寝つきが悪い、途中で目覚める
- 血圧が不安定
- 温かい場所に長時間いられない
- 異常に汗をかく
- 静かにしていても心臓がドキドキする、動悸がする
- 目が見えにくい、ぼやける
- 目が疲れる、目を開けていられない
- まぶしい、目の奥が痛い
- 目が乾燥する、涙が出やすい
- 唾液が出やすい、出過ぎる
- 微熱が出る
- 胃腸の調子が悪い、腹部膨満感がある
- だるくて横になりたくなる
- 疲れやすい、全身に倦怠感がある
- やる気が出ない
- 天気が悪い日やその前日は症状が強い
- 気分が落ち込む
- 集中力が出ない
- 不安感がある
- イライラする
- 根気が出ず仕事に影響が出る
- のぼせ、手足の冷え、しびれ
- 胸の痛み、圧迫感、しびれ
正常:1~4項目
軽症:5~10項目
中症:11~17項目
重症:18項目以上
頚性神経筋症候群の治療法
頚性神経筋症候群はおいて最も重要なのは、硬くなった首の筋肉を本来の柔軟性と弾力性のある組織に戻せるかです。頸椎のズレも頚性神経筋症候群の患者には多くみられますが、筋肉や筋膜、腱、靭帯などの柔軟性がもどればアライメントの異常は解消されていきます。
臨床の現場では、筋筋膜性疼痛症候群と同様に以下の物理療法、トリガーポイント療法、運動療法、認知行動療法が治療の中心となっていて、薬物療法は限定的に使用されています。今のところ頚性神経筋症候群に有効な内服薬はありません(個人的には内服薬で筋肉の異常が解消することはないと考えています)。また慢性痛患者へ安易に鎮痛薬や抗うつ薬などの向精神病薬を使用することは世界的に注意喚起されています。
1.物理療法
温パック:リラックス効果と血液循環の促進
超音波・低周波:温熱や振動による血管の拡張
マッサージ:リラックス効果と血液循環の促進
Facia(筋膜)リリース:徒手(手技)や器具を用い、Faciaの異常を解消
2.トリガーポイント療法
トリガーポイント注射:トリガーポイントに局所麻酔薬や生理食塩水を注射することで、索状硬結を取りのぞき、血行を促進する。
トリガーポイント鍼刺入法:トリガーポイントを針で刺激し、索状硬結を取りのぞき血行を促進する。
はり治療:東洋医学のある種の鍼治療(経絡理論を用いないもの)、ドライニードリンク(dry needling)、筋肉内刺激法(intramuscular stimulation:IMS)
3.運動療法
ストレッチ:筋や関節を伸ばすことによる筋の柔軟性、関節の可動域の回復、血液循環の促進。
筋力強化運動:適度な運動とスポーツによる運動機能の回復
固有受容トレーニング:筋と脳との促通力の強化。特に平衡、姿勢、関節の調節を強化する為にトランポリンや平行棒、バランスボールなどが有効。
4.認知行動療法
痛みについての誤った認識を修正する「認知療法」と、痛みと行動の関係を知って日常生活でできることを増やしていく「行動療法」を組み合わせた治療法。
頚性神経筋症候群の原因である首コリ(筋肉の緊張)には、進行度によってステージがあります。ご自身のステージに合った治療法を受けることが早期の症状改善につながります。
当院では、マッサージや整体では改善しない頚性神経筋症候群の改善を専門にしております。
なかなか改善しない症状でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。