筋膜とは柔らかい骨格
筋膜とは、個々の筋肉を包み、互いを分割し、かつ連結する線維性組織のこと。
英語ではFascia(ファシア)ですが、筋膜=Fascia(ファシア)ではありません。人体に広がる結合組織のシステム全体を指すのがFascia(ファシア)であり、筋膜はそのシステムの中の一つです。
※本サイトでは便宜上、筋膜=Fascia(ファシア)とします。
- Fascia(ファシア):全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う。
- 筋膜:個々の筋線維、または筋肉群を覆い、互いを分割し、かつ連結する。
2016年に発表された医学誌では、筋膜はこのように定義されています。
『すべての臓器、筋肉、骨、神経線維を取り囲み、織り込み、相互につなぎ、体に機能的な構造を与え、すべての身体システムが統合された方法で作用するための土台』
筋膜は、体全体に網の目のように張り巡らされたひとまとまりの構造体であることとから、「柔らかい骨格」と言われています。
筋膜の種類
筋膜は解剖学的位置に基づいて4つに分類することが出来ます。
浅層の筋膜
皮膚のすぐ下にあり、脂肪組織が含まれてることから「脂肪層の筋膜」とも呼ばれることがあります。
浅層筋膜は線維性ですが、多様な脂肪分を伴い、高い弾力性を持っています。この性質により、筋肉から皮膚を区切り、正常に互いを滑走させることができます。
浅層筋膜は、温度調節、血行、リンパの流れに関係し、次に説明する深層筋膜と直接つながっています。
深層の筋膜
深筋の筋膜は、密度の高い、よく組織化された線維性の層で、筋肉を覆っています。スーパーで買った鶏肉の表面を覆っている白い膜(シルバースキンと呼ばれる部位)のことです。
深層の筋膜は、体の最深部にあるボディスーツのようなピッタリとした層です。各筋肉を隣り合う筋肉から分離しつつも相互に接続させ、互いを滑走させます。
筋肉の力の伝達を起こすのが深層の筋膜であり、筋肉の慢性的な問題を起こすのがこの筋膜です。当院のはり治療のターゲットでもあります。
内臓の筋膜
内臓の筋膜は、心臓、肺、肝臓、腎臓、胃、腸といった内臓を覆っています。
内臓の筋膜は臓器を吊り下げ、体壁に固定し、位置を保持しながら、内臓の生理学的運動を可能にしています。
内臓の筋膜に手術や事故によって異常が起こると、筋膜が癒着し、内臓の機能や可動性に影響を与える可能性があります。
神経の筋膜
神経の筋膜は、中枢神経(脳と脊髄)と末梢神経の神経系システムを包んでいます。ひとまとまりの神経が筋膜によってっ区切られていることから、神経は筋肉と同じ構成になっています。
典型的な筋肉の神経では、感覚細胞が運動神経細胞の3倍あり、いかに体が運動制御より感覚認識を必要をしているかが解ります(体が外部からの刺激をキャッチする感覚受容器には、触覚・聴覚・重力覚・平衡覚・圧覚・張力覚・振動覚などあります)。
筋膜を通して脳に伝達される感覚情報の量は、視覚よりも圧倒的に多いため、筋膜は体の最も大きな感覚器官とも言えます。
筋膜と痛みの関係
筋膜は「液体」と「線維」で構成された『粘弾性』が特徴の組織です。
『粘弾性』とは、粘性と弾性を併せ持った性質のこと。粘性は主に液体に見られるもので、力を加えると変形して元に戻らなくなる性質です(はちみつ、マヨネーズなど)。一方、弾性は力を加えると変形するものの、力を除くと元の形に戻ろうとする性質です(バネ、タイヤなど)。
筋肉を覆っている筋膜はほどよく温まっていると、粘性を低下させ、滑走性と可動性をより高めます。軽い有酸素運動やストレッチの後、体が動きやすくなるのはこのためです。
筋肉にかかっている負荷が対処可能である場合、筋膜は適切な方法で形を変えていき、負荷が取りのぞかれると正常であれば元の形に戻ります。しかし、負荷が過剰であったり、長時間・反復的に繰り返されると、筋膜は損傷を受けて元にもどらなくなってしまいます。これにより筋膜の滑走性と可動性が低下し、神経、血管、リンパ管を絞扼して、痛みを始めとする様々な症状を引き起こすのです。
当院では、マッサージや整体では改善しない筋筋膜性疼痛症候群の改善を専門にしております。
なかなか改善しない症状でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。